面接廃止によって神奈川公立高校の入試はどうなる?

現中3+以下の学年及び保護者様向けの記事です。久々の長文ですが、お付き合いを(汗)。

◆2023年度(令和5年度)までの入試制度

通塾生(新中2・新中3)の子は神奈川県公立高校の入試制度はある程度知っていることと思う。では、新年度を迎えるに当たり、新中1の子やその保護者様にも知っておいてもらえるよう、ここで改めて神奈川県公立高校の入試制度を振り返ってみたい。

現行の入試制度は、2013年度(平成25年度)から始まった。2004年度(平成16年度)~2012年度(平成24年度)までの入試においては、前期選抜と後期選抜という2回の受験機会があったが、現在はそれらをひとまとめにした「共通選抜」というものになった。

共通選抜では「内申点+学力検査+面接」の合計点で選抜する第1次選考(定員の9割)と、「学力検査+面接」で選抜する第2次選考(定員の1割)がある。それぞれの比率は2割以上と定められていて、ほとんど全ての高校で面接は2割の設定だ(第2次選考では3割や4割もある)。

以下、共通選抜における各数値の計算方法。

参考:神奈川県公立高等学校入学者選抜について

簡単にまとめると、内申点、学力検査、面接点をそれぞれ100点満点に換算し、3つの項目の合計点が1000点満点になるように各校で比率を配分するというもの。なお、特色検査を実施する場合は、それに100~500点が加算されるから、1100~1500点満点になる。

◆2024年度(令和6年度)からの入試制度

まずはこちらが変更点の概要。

これまでは県教委曰く、「受験生全員に学力検査と面接の機会がある」というものだったが、2024年度の受験生(現中3生)からは一律の面接がなくなる

面接は受験生の特性や長所なども含め、総合的な意欲をはかることを目的として実施されてきたけれど、10分程度の短い時間で一人ひとりを見極めるのは難しいという指摘も多く、一部の学校では面接の得点はほぼ変わらず、面接試験が形骸化しまっている学校が少なくなかった。小田原や平塚江南などのようにほぼ全員が同じ点数の学校がある一方、山北や秦野曽屋などのように20点以上の差が開く学校もある。このように学校によって点数格差が出たり出なかったりするのも廃止の一つの理由となっているかもしれない。

◆全体のおよそ2割を占めていた「面接」の得点はどうなるのか?

例えば「内申点」「学力検査」「面接」の比率が「4:4:2」だった西湘高校が、この面接の「2」をどう配分するかということ。

上記のような算出方法でいくと、以下のような選考基準が考えられる。

参考:神奈川県公立高等学校入学者選抜について

上記にあるように、新制度になった場合、内申点と学力検査のみで考えれば、<内申点:学力検査=「5:5」「4:6」「6:4」>のような配分になることが予想される(横浜翠嵐や湘南などは、3:7または2:8になるのでは?)。少なくとも現在の入試制度に比べ、上位校では学力検査が、下位校では内申点が、それぞれ今まで以上に重視されることになりそうだ。

◆実力一本勝負は難しい?第2次選考の合否に内申点が…

これまでの第2次選考は「内申点」を加味せずに「学力検査」と「面接」で合否が決定するという、いわゆる実力一本勝負という選抜方法だった。ゆえに、何らかの事情で内申点が低い、または成績資料が整わない受験生は、第2次選考狙いでチャレンジ受験をしていたのではなかろうか。ところが、来年以降は少し注意が必要だ。なぜなら…

新制度入試では第2次選考にも内申点が加味されるからだ。

中学校で2021年度から全面実施された新しい学習指導要領「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の観点別学習状況のうち、「主体的に学習に取り組む態度」が第2次選考で評価の対象となる。
「主体的に学習に取り組む態度」とは、これまでの「関心・意欲・態度」に当たるもので、これを以下のように点数化していく。

評価A:3点
評価B:2点
評価C:1点

これらを9教科分=計27点満点とし、さらにそれを100点満点に換算し、第2次選考の得点として可算するというわけだ。だからもう一度言う…

実力一本勝負だからといって、内申点(特に「主体的に学習に取り組む態度」)を疎かにすることなど、愚の骨頂に等しい。

ただ、この「主体的に学習に取り組む態度」というのは、ノートやレポートのクオリティ、授業中の積極性など、客観的評価が難しく、また、各学校で統一されていない評価方法であることが問題点として考えられる。それに、授業中の積極性などは、性格によるところも多分にあるだろうし、ただアピール上手な子だけが得するようなことがあってはならない。

◆特色検査という名で面接を実施する高校も?

現時点では詳細は発表されていないが、特色検査という名で面接を実施する高校もあるだろう。特に専門学科や下位校では、学力もさることながら、学習意欲や適性等をじっくりと見極めることが望ましいだろう。

◆今回の新制度に思うこと

やはりこの「主体的に学習に取り組む態度」が重視されるというのは、どうしても一抹の不安が残る。各学校で評価方法を統一し、客観的基準に基づく選抜が機能してくれることを心の底から願う。学力があるのに先生にアピールするのが苦手ゆえに成績がつかなかったり、また逆に、学力がないのに先生にアピールするのが得意ゆえに成績がついたり…なんてことがないように前者は高校の選択肢が少なくなってしまうし、後者は進学後に学習レベルについていけなくなる…。両者にとって、受験や進学後にプラスにはたらいていかないだろう。

内申点も学校によりかなりの格差がある。学年のおよそ半数に「5」がついてしまう学校もあれば、2割しか「5」がつかない学校もあったり。また、同じ「5」でも、かなりの学力差があるのも事実で、これが「3」や「4」ならなおのこと。だから、実力一本勝負というのは、公平性があっていいんじゃないかなというのが個人的な考えではある。

いずれにせよ、何かを変えれば、また新たな問題点等も出てくるのが必定。“完璧”なものなどない。とにかくこの制度になる以上、できる限りの取り組みをしていくしかない。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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