2017年度 神奈川公立入試問題講評【社会】

今年著しく傾向が変わったのが社会。記述もさることながら問題数自体も大幅に減少。しかしながら、思考力を問われる問題も随所にあり、一概に「簡単になった」とは判断しにくいものがある。各問ごとに考察していきたい。

問1・問2 地理分野(日本・世界)
まず、現行の入試制度になってから毎年出題されてきた、与えられた統計資料から地図上の都道府県を塗りつぶす問題が消えた。また、地形図の読み取りでは、写真から撮影した地点・方向を問うものに代わり、数年ぶりに地形図上の断面図の読み取りを問うものに。定番の時差については、例年よりもひねった出題形式であり、単に経度差から時差を割り出せば正答できる問題ではなく、苦戦を強いられた受験生も例年よりは多くいたのではなかろうか。十年ほど前に何度か出題されていた形式に近く、問題文をしっかりと読み込む必要がある。

問3 歴史分野(古代~近世)
例年受験生を苦しめてきた年代・時代の並びかえ問題がなくなり、全体として易化したといえる。一生懸命年代を暗記して臨んだ受験生にとっては気の毒だが、「645年大化の改新」など年代の単純暗記は今後もあまり役には立たないと思われる。過去問を十分に研究していれば分かることだが、過去数年、問題用紙に歴史的出来事の順は書かれてあるものの具体的な年代は一切表記されていない。要するに、大まかな時代の「流れ」を押さえることが何より重要であり、「〇〇〇年△△が■■」なる点の知識は求められていないということだ。

問4 歴史(近現代)・公民分野融合
特徴的だったのは、歴史的出来事の要因を「需要」「供給」という公民の知識を活用して記述させる問題。また、受験生にTPPについて考えさせることを意図しているのか、開国直後の不平等条約における関税自主権についての理解を問う問題もあり、歴史的観点から現代社会を考察する力を測っているのかと思うのは私の穿った見方だろうか。

問5 公民分野
決して難しくないのだが、議院内閣制と大統領制との違いについて触れる問題が印象的だった。これも昨年のアメリカ大統領選挙が影響しているのか、現代社会の政治や経済に関心を持てというメッセージ性を感じる。

問6 公民分野
最後に本格的な記述問題が登場。しかし、これまでの「60字以上」というような字数の制約があるものではなく、指定語句さえ使用すればいいというものであったため、ポイントさえ落とさなければ比較的書きやすかったのではなかろうか。それ以外は、国際社会に関わる基本的な知識があれば容易く解答できる問題。安全保障理事会や京都議定書など、直前期に確認したものばかり、出来ていてくれると嬉しいが…。

【総評】
全体を通して…
①問題数そのものの減少
②記述問題の減少
③地図の塗りつぶしなどやや手間のかかる問題がなくなったこと
④時代整序や地域選択に関する複数完答式の問題の減少
など、上記4点から、全体的には易化と思われる。しかし、単なる知識を問う問題ではなく、与えられた資料の読み取りなど、一つひとつの問題でかなり思考力を要する問題が増加しているため、問題数や記述量の割には、中には難しくなったと感じる受験生もいるのではなかろうか。いずれにせよ「社会=暗記」ではないことがますます顕著になった問題と言っていいかもしれない。脱暗記を図り、常に社会に目を向け、考え判断する力を養っていきたい。

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