“ゆとり教育”全盛期の高校入試

ゆとり世代は「ゆとり教育を受けた世代」とされている。でも、実際のところ何年生まれから何年生まれまでが「ゆとり世代」なのかは明確には定まっていない。というのも、「ゆとりを持たせる学習指導要領の改訂・実施」は1980年度、1992年度、2002年度の3回に渡って行われているからだ。

◆1980年度のゆとり教育
1980年度の改訂ではカリキュラムの精査や授業時間の削減が行われた他、「ゆとりの時間」という「学校が創意を生かした教育活動を行う時間」が設けられるなどした。

◆1992年度のゆとり教育
1992年度もカリキュラムの精査や授業時間の削減が行われ、この年の9月から第2土曜が休みになった。その後、1995年度からは第4土曜も休みになる。

◆2002年度のゆとり教育
そして2002年度の学習指導要領改訂では、小中学校の学習内容を3割削減し、その分を高校での指導に回すことになった。また、この年から土曜日は休みになり「完全学校週5日制」となった。過去2回の改訂時よりも、大幅な学習内容の削減や休みの増加が「ゆとり」の印象を強め、メディアがこの教育を受けた世代を「ゆとり世代」と呼び始めた。その影響でこの年代に教育を受けた世代を、ゆとり世代だと考える人が一般的に多く、ゆとり全盛期ともいえる。

そんな2002年度のゆとり教育と“脱ゆとり”に舵が切られた後との高校入試を比較してみたい。

まずこちらが2012年度(ゆとり)の英語・問2。

ゆとり全盛の頃の2012年度は日本語訳付き。しかも、書かせる単語は全て中1レベル(thirteen / night / watch / together)で、活用の変化はナシ。

そしてこちらが2020年度(脱ゆとり)の英語・問2

一方、2020年度は会話の流れから適切な英単語を考えさせるという問題。書かせる単語は中2・中3レベル(afraid / strongest / voice)で適切に変化させる必要アリ。

もう少し見てみよう。

こちらは2010年度(ゆとり)の英語・問4

2010年度の英語には驚かされた。日本語訳付きで、正に定期テストレベルと言ってもいい。他の問題も簡単で、この年の英語の合格者平均点はなんと38.8点(当時は50点満点)というあわや8割に届きかねない超ハイスコアとなった。今ではにわかに信じがたい点数だ。

そして、こちらが2018年度(脱ゆとり)の英語・問4

一方、2018年度は対話から適切な文を作るというもの。(イ)のasの使い方に気づくかどうかがポイントだった。

これらは決して、ゆとり全盛期の頃に高校受験を迎えた子どもたちの学力が低いと言いたいわけじゃない。彼らとて望んでその世代になったわけじゃないのだし。言いたいのは、この頃の入試問題は、これから受験勉強を始めるうえで打って付けだということだ。この英語に限らず他教科もかなり基礎的な問題で占められている。理科や社会は解き切るまで30分もかからないのではなかろうか。

神奈川の入試は、ゆとり教育の頃までは全国でも指折りの易しさだっただろう。でも今は違う。5科全てに渡り文字数は全国トップレベルで読み取る力が随所に求められ、選択問題も一筋縄では正解を絞り込めない仕組みになっている。明らかに難しくなった。だから、ゆとり教育の頃の神奈川入試問題は受験勉強の“始めの一歩”には適度な難易度といえる。何となく選んだ市販の問題集をやるよりも数倍効果があると思う。

でも、もうなかなか売ってないんだよなぁ…(汗)。
もし手に入れることができれば是非とも取り組んでほしい。
2012年度までの過去問。

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