逃げない

小学生の中に、国語を極めて苦手としている子がいる。語彙が不足しているため、漢字の習得はもちろん、文章読解に至っては、問題文の意味を読み取るまでに時間がかかり、周りの子どもたちから大きく差をつけられてしまっているのが現状だ。

でも、だ。「君はできなくてもいいよ」と、特別扱いは極力しない。安易な「線引き」は子どもの可能性を摘んでしまいかねない。子どもの成長スピードは千差万別。スロースターターの子もいる。今は出来なくとも、これから出来るようになるかもしれない。だから、どんなに時間がかかろうとも、自力で壁を越えられるよう後押ししたい。

この講習中にも、その子には居残り・呼び出しを数回指示。授業中に悔し涙を流したこともある。そんな彼が、先日の国語で成長を見せてくれた。これまでほとんど出来なかった文章読解において、全問正解を果たした。俺は赤ペンで大きく二重丸を書いて彼に返した。それまで国語の授業のときは、どこか暗く、うつむきがちだった彼が笑顔を見せた。「やればできる」を少しでも実感してくれればいい。

それでも、今日も居残りになってしまった(汗)。どうにかこうにか最低限のところまでは学習を終え、帰ろうとした彼に俺は言った。
「出来なくて居残りや呼び出しをさせられて、何度も叱られて嫌かもしれないけど、響きそうにないヤツに俺は何も言わないよ。こんなに居残りさせたり叱ったりしてるけど、オマエは頑張ってるなぁと俺は思ってんだ。何故か分かる?それはさ、一度も逃げてないからだ。呼び出されても、居残りをさせられても、叱られても、一度だって休んでないんだよ。勉強、特に苦手な国語の勉強、嫌だなぁ、やりたくないなぁって思えば、一度くらいはテキトーな言い訳つけて逃げたくなるもんだ。でも、一度も逃げてない。だから、頑張ってるって思うし、可能性があるって思ってんだ。だから、何度も叱る。」
彼は驚いた様子で俺の言葉を聞いていた。そして、全問正解したときのような笑顔で帰って行った。

これからも叱り続けるし、呼び出し・居残りもさせる。
でもそれは、オマエが頑張れるヤツだからだ。
頑張ろう、K。必ず変われる。

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