※今からおよそ15年前の話です。入試制度は現行のものと異なります。
<前回(その3)の話はこちら>
今回の内容は、それだけ真剣だったからなのかもしれませんが、鮮明に記憶に残っています。言葉遣いなど、少々聞き苦しく思われるところもありますが、敢えてほぼ当時のままに記します。
塾に行くと親に偽って遊びに出かけていたKを、俺は授業前に別室に呼び出した。
「よう、K、何で呼び出されたか分かるよな?」
『・・・はい・・・塾をさぼって遊びに行ってました。』
お父様から先日の俺とのやりとりを聞いていたのか、Kは少しバツが悪そうに話した。
『ふ~ん。』
「・・・・・・。」
「お父さんに『塾行ってくる』って言って出てったんだよな。」
『・・・はい・・・。』
「バカヤロウ!!!どんだけバカやってもいいけどな、親を裏切るようなことすんじゃねぇよ!お父さんがどういう気持ちでお前を塾に預けてるか一度でも考えたことあんのか!?お父さんが必死に汗水垂らして稼いだ尊い金を、お前はドブに捨てるようなことしてんだぞ!今の成績じゃどこの高校にも行けないお前を何とかしたくて、それで・・・。そんな我が子を想う親の気持ちを踏みにじるようなことだけはすんじゃねぇ!」
Kのところは父子家庭だった。それゆえの親子関係の難しさなど、お父様が苦労なさっているのを事前に聞いていたこと、そして、中3の夏という極めて大事な時期であることから、このようなことが初めてではあっても、引き締めなければならないと判断したうえで厳しく指導した。
おそらくこれほど叱られる経験はなかったのかもしれない。Kは涙を流し始めた。
「俺なんかに謝る必要はない。でもお父さんには絶対に謝れ。誠意をもって謝れ。それとあと1つ。これからまた同じようなことがあれば、俺はお前の入塾を許可することはできない。これまでの自分を見つめ直し、受験生として、人としてどうあるべきか、口先ではなく行動をもって示せ。それがケジメだ。」
その後,中3生の講習はいつも通りに始まり、いつも通りに終わった。全ての授業が終了したその夜、俺はKの家に電話をし、お父様にその日のことを包み隠さず全て話した。強烈に叱り飛ばしたこと、Kが涙を流したこと。
「すみません。かなり強い口調で叱りましたので、K君も涙を流して・・・。今回のことで、講習を途中で辞退すると言われてしまっても致し方ないと思っています。」
『いえ、とんでもありません。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。叱っていただきありがとうございます。これで変わってくれると良いのですが・・・。』
曲がったこと、筋の通らないことは、どうしても飲み込めない性分(今もそうだけど・・・汗)。平気でウソをつくような大人にはなってほしくなかったし、くさい物には蓋をし、ごまかすことでやり過ごすような大人にもなってほしくなかった。不器用でもいい、とにかく真っ直ぐ・・・そんな人間であってほしい。
でも、伝わらなければそれは単なるエゴでしかない。次の授業も来てくれるだろうかと、不安を覚えながらその日は帰路についた。
<続く>
教え子シリーズ①はこちら▼
ある教え子のこと①

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