「言われたとおりにきちんとやる子」というのは、さまざまな場面で評価される存在だと思う。宿題も忘れず、指示も守り、与えられた課題にもきちんと取り組む。こういう姿勢は小学校低学年ぐらいまではある種の強みであり、安定した学習成果にもつながる。けれども、この素直さが小学校高学年や中学校以降になると、思いもよらない形で学力の伸びを妨げてしまうことがある。

■「勉強=習得」ではなく「勉強=作業」になってしまっている
小学校低学年までは、「何をどれだけやったか」が重要で、それがそのまま成績などにも反映される。しかし、小学校高学年ぐらいからは、それだけでなく、「どのように考えるか」「どうやって解くか」、要するに、WhatではなくHowが重要になってくる。自分で考え、アレコレと試行錯誤する力が求められる場面が増えてくる。このとき、「言われたとおりにやる」に慣れている子ほど、自分で考え、判断しなければならないことに戸惑いを覚え、手が止まってしまう。また、言われたとおりにやることが習慣化されてしまっていると、「なぜ?」「どのように?」と、考える機会が減るため、「勉強=習得」ではなく、「勉強=作業」になってしまっていて、本質的な理解につながりにくくなる。「言われたとおりにやっているのになかなか成果に表れない」というのは、実はここから始まることがほとんど。一見すると勉強量は十分で努力もしている、けれども結果が伴わない。それは、「言われたとおりにやる」と「学力が伸びる」とは必ずしも一致するわけではないからだ。
言われたとおりにやることは大切だ。でも、それだけでは必ずどこかで壁にぶつかる。上位層にいる子どもたちは、単に与えられた課題をこなすだけでなく、「なぜこうなるのか」「他の解き方はないか」といったことを常に考えながら学習を進めていく。つまり、同じことをしているように見えても、その中身が全く異なる。
■具体的に説明すると・・・
①「終わらせること=ゴール」になってしまっている
「言われたとおりにやる子」が伸び悩む主な原因の一つが、「終わらせること」が勉強のゴール(目的)になってしまっている点だ。宿題をやる、問題集を一通り解く、提出物を出す・・・これらは本来、理解を深めるための「手段」であるはずだ。しかし、それ自体が目的になってしまい、「終わらせること=学習完了」と捉えてしまう。この状態では、「どれだけ理解したか」ではなく、「どれだけ進めたか」が勉強の基準になってしまっている。ゴール=目的を「終わらせること」から「理解し、解けるようになること」に変えられているかどうか、それが成長の分岐点。
②初見問題への「適応力」が育っていない
言われたとおりにきちんとやる子は、慣れた手順や解き方が通用する場面では力を発揮する。しかし、その一方で、あまり見慣れない問題や少し条件が変わった問題に直面すると、途端に手が止まる傾向にある。これは適応力(既に学んだことを組み合わせ、状況に応じて使い分ける力)が育っていないため。中学以降の学習では、この力がさまざまな場面で求められる。なぜなら、問題は必ずしも「習った通りの形」で出題されるとは限らないからだ。パターン通りに解く力だけでなく、自分で考えて対応する力を育てること。この転換がなければ、学習はある段階で必ず頭打ちになる。
だから、CLEARではそう易々と答えは教えない。自分で考え、調べ、を繰り返させるようにしている。身に付けるべきは「答え」ではなく「解き方」「調べ方」。それが身に付けば、自分で勉強できるようになる。それが理想。「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」を心がける。
■いつ頃、どんな壁に?
①小4・小5で経験する「丸暗記の限界」
小4は学力差の最初の分岐点ともいえる。それまでの低学年では、計算の手順や漢字、語句など、覚えれば対応できる学習内容が中心だった。そのため、「言われたとおりにやる学習」でも一定の成果が出た。
しかし小4になると、学習内容は一気に抽象度が増し、単なる丸暗記では対応できない領域へと入っていく。そして、小5になるとそれが一気に学力差として表れ始める。特に算数では、「速さ」や「割合」など、本質的な理解ができていないとどうにもならなくなる単元が目白押しだ。
②中1から顕著になる内申と実力との乖離
中1で初めて経験するのが、「内申」と「実力」との乖離だ。提出物をきちんと出し、授業態度も良く、小テストもそつなくこなす。このタイプの子は内申では高評価を得やすく、一見すると順調に見える。しかし、定期テストや模試になると点数が伸び悩むケースが少なくない。これは、「やるべきことをやる力」と「問題を解く力」とが必ずしも一致していないため。内申は良い、けれども、実力が伴わない。そういうタイプの子は、内申に胡座をかかず、実力を磨く意識を持たなければいけない。そのための学習に必要なことは冒頭でも述べたとおり。また、過去ブログ「総合問題を解け!」も参考にしてみてほしい。
これは塾講師をしているとたびたび感じること。例えば新規で入塾してくれた子で、英語や数学が4や5であっても、いざ授業を進めていくうちに、「アレ???」と感じる場面は少なくない。
■最後に
「言われたとおりにきちんとやる」。
まずは周囲のアドバイスに素直に耳を傾け、言われたとおりにやってみる、そういう姿勢を否定しているわけでは決してなく、むしろ大事なこと。くれぐれも誤解のないようにしてほしい。言われたことをきちんとやることが前提で、そのうえで自分なりの工夫や試行錯誤をしなければ、どこかで必ず壁にぶつかるということを認識しておかなければならない。
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