公立高校入試の新制度について改めてまとめてみた

「面接廃止によって神奈川公立高校の入試はどうなる?」の記事がいつも閲覧されているようなので、やはり関心をもたれている親御様や受験生自身も多いのではないかと思い、改めて新制度入試について過去記事を引用して説明していきたい。

ポイントは2つ。
「全員一律の面接廃止」、
「調査書の『主体的に学習に取り組む態度』の活用」。

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全員一律の面接廃止

全員一律の面接が廃止され、選抜方法が以下のように変わった(県教委HPより抜粋)。

第1次選考はS1の点数に基づいて選考する。これまでのS1の満点は面接点を含めて1000点だったため、調査書と学力検査の比率(上記のfとg)は最大6までだった、けれども、新しい入試制度では「8」まで設定することが可能となる。つまり、以下のいずれかの比率となる。

・調査書2:学力検査8(学力超重視型)
・調査書3:学力検査7(学力重視型)
・調査書4:学力検査6(学力やや重視型)
・調査書5:学力検査5(バランス型)
・調査書6:学力検査4(内申やや重視型)
・調査書7:学力検査3(内申重視型)
・調査書8:学力検査2(内申超重視型)

上位校であれば学力重視型の傾向にあり、下位校であれば調査書重視型の傾向にあるのはこれまでの選考基準でも明らかなところ。受験生はこの数値をしっかりと認識しておく必要がある。

●「主体的に学習に取り組む態度」の活用

第2次選考はS2の点数に基づいて選考する。これまでの選抜方法では第2次選考は学力検査と面接の結果(特色検査を実施した場合はそれを加えた結果)によって選考を行ってきた。そこでは調査書は使用されなかったが、新しい入試制度では第2次選考においても調査書に記載されている観点別評価の「主体的に学習に取り組む態度」が活用される。つまり、調査書の重要性が増すことになる。

・調査書2:学力検査8(学力超重視型)
・調査書3:学力検査7(学力重視型)
・調査書4:学力検査6(学力やや重視型)
・調査書5:学力検査5(バランス型)
・調査書6:学力検査4(主体性やや重視型)
・調査書7:学力検査3(主体性重視型)
・調査書8:学力検査2(主体性超重視型)

「主体的に学習に取り組む態度」が点数化され選考に使用されるのは、業界内では本当に物議を醸している。これは客観的かつ統一的な評価が難しいため、評価する側(学校の先生)の主観が多分に含まれることは否定できず、極めて不透明な選抜になりかねないからだ。少し言い方は悪いけれど、「先生に気に入られている子」だけが有利になってしまうようなことがあってはならない。

では、これまでの内容を、実際の高校に当てはめて具体的に見てみよう。

●第1次選考の具体例

弊塾の中3に関わると思われる高校をピックアップして説明していく。
例えば、小田原と平塚江南。いずれも、旧学区トップ校で進学重点校エントリー校だ。選考基準におけるこれら両校の違いは次のとおり。
【小  田  原】内申4:入試6:特色検査1=計1100点満点
【平塚江南】内申3:入試7:特色検査1=計1100点満点

小田原よりも平塚江南の方が学力重視。これがどう合否に影響してくるのか?具体例を示してみたい。

たとえば、小田原高校を受験する内申108のAさん内申120のBさんがいたとする。学力検査前の両者の持ち点は以下のとおり(小数点以下切捨)。
A:108×100÷135×4=320
B:120×100÷135×4=355
次に、両者の学力検査の得点を、Aさん420点Bさん400点と仮定すると、学力検査における両者の持ち点は以下のとおり(小数点以下切捨)。
A:420×100÷500×6=504
B:400×100÷500×6=480
ここまでの両者の総得点がこちら。
A:320+504=824 / 1000点満点
B:355+480=835 / 1000点満点
この時点ではBさんが上位。Aさんが逆転するには特色検査でBさんより12点以上上回る必要がある。とはいえ12点であれば、2~3問正答数を上回れば逆転できてしまう。

一方、そのAさんとBさんが小田原高校ではなく平塚江南高校を受験したとすると、学力検査前の両者の持ち点は以下のとおり(小数点以下切捨)。
A:108×100÷135×3=240
B:120×100÷135×3=266
次に、両者の学力検査の得点を、Aさん420点Bさん400点と仮定すると、学力検査における両者の持ち点は以下のとおり(小数点以下切捨)。
A:420×100÷500×7=588
B:400×100÷500×7=560
ここまでの両者の総得点がこちら。
A:240+588=828 / 1000点満点
B:266+560=826 / 1000点満点
今度はこの時点ではAさんが上位。まさに逆転現象が起こったということ。あとは特色検査の出来次第。

ここまでで分かるとおり、内申10点程度の差(とはいえ内申10点の差って“成績”で追いつくにはかなり大変)は、学力重視の高校なら学力検査次第で十分に逆転可能。20点ほど上回ればいい(1問4点や5点がほとんどのため正答数なら5~6問)。特に特色検査のある高校ならさらに逆転は起こりやすいだろう。

参考までに、各比率における内申1点に相当する入試の点数はこんな感じ。
①内申3:入試7⇒約1.6点
②内申4:入試6⇒約2.5点
③内申5:入試5⇒約3.7点
④内申6:入試4⇒約5.6点
⑤内申7:入試3⇒約8.6点

●第2次選考の具体例

ではこれまた弊塾の中3に関わりのある西湘高校を例にとって説明していこう。
たとえば西湘高校の第2次選考基準は「学力検査8:調査書(観点)2」。XさんとYさんが受験したとする。
Xさん:「主体的」観点オールA(27点)/学力検査320点
【学力検査】320×100÷500×8=512
【調査書】27×100÷27×2=200
【合計点数】512+200=712
Yさん:「主体的」観点オールB(18点)/学力検査350点
【学力検査】350×100÷500×8=560
【調査書】18×100÷27×2=133
【合計点数】560+133=693

従来の入試制度なら圧倒的にYさんが有利。そりゃそうだ、学力検査で30点も上回っているのだから。ところが新制度ではどうだろう。学力検査で30点も下回っているにもかかわらずXさんの方が有利になるのだ。全ては「主体的に学習に取り組む態度」によるもの。これまでのような入試一発勝負が難しくなったワケはここにある。とはいえ、この主体的云々は、定期テストのような客観的な数字による評価が難しく、評価する側の主観に左右されてしまうのが実際のところだろう。授業に臨む姿勢や提出物関連の精度(期限もナカミも)等がこの評価に大きく関わるところだからだ。だから、「第2次選考の“闇”」なのだ。「先生に気に入られた者勝ち」があってはならない。

ちなみに、多くの高校が上記の「学力検査8:調査書2」の比率で、次いで7:3が多い印象だ(「専門学科・コース」などは除く)。その中にあって、6:4の高校がある。

藤沢西高校だ。

湘南地区にある藤沢西高校は、毎年人気の集まる高校の一つ。弊塾からも何名か進学している。比率8:2でさえ観点別評価次第では「入試でいくら点数を取っても…」であるのに、それが6:4ならなおのこと。たとえ成績に4や5が並んでいても、「主体的に学習に取り組む態度」がトータルで低くては、たとえ入試で頑張っても報われなくなってしまう。ただ、藤沢西高校はそれだけ、積極的に学ぼうとする生徒が欲しいということ。高校のカラーが如実に表れていると見て取れる。

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ここまで読んでいただきありがとうございました。
ご参考にしていただけましたら幸いです。

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